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蠢くウジが開く道

アメリカミズアブ の蛆虫の飼育スタイルについて

 

 

アメリカミズアブ が活発に餌を食べ成長し、繁殖するためには気温20−30度の暖かさ、適度な湿度(80%以上)と午前中(8−12時)の日光と言われているので実際になんらかの理由で通年飼育しようとなると常夏の地域でなければ基本的には気温がある程度保たれる室内で管理し、室外には夏専用の野生卵回収用を備えるのが妥当かと思われる。

 

全てうまくいくと大きくなった蛆虫はPupa とよばれる幼虫から形の変わらないサナギ状態に入り、やがて羽化した成虫は飛び回って相手を探し交尾、産卵、そしてまた小蛆虫が孵化というサイクルが回る訳であるが、最適な温暖な環境かでは1ヶ月弱で1サイクルが回ることになっている。

これにを人工的に管理する際、一般に自然と同じ継続循環式か同じ幼齢のグループを管理するバッチ方式の2方法があるように思われる。

(1)継続循環式は自然の繁殖サイクル(産卵から孵化、幼虫の成長、蛹化、羽化、交尾、再び産卵まで)全てを一箇所で回すもの。

夏の間、あるいは通年温暖な地域においては庭隅の生ゴミを入れたコンポストでこれが勝手に起こり得るのだが、これを人工的に長期的に室内で管理するとなると色々と考えないといけないことが出てくる。
成虫が飛び回るスペースを含め飼育環境全体の温度管理が必要なのでスケールが大きくなるに従って温度管理コストが上がることになる。
手間的に定期的に餌をやり、蛆の食べ残しや排泄物を片付ける以外は特に何もしなくてもサイクルは回るはずだが、蛹になるために這い出してくるサナギ前の蛆以外、同じサイズ/齢の蛆を利用や販売の為に回収することが非常に困難である。

蛆の排泄物は粒子が細かく水分を保持して粘性の高いドロドロなものになりやすいので、予め基材の水分調整と通気性確保の目的で粗めのおが屑や園芸用マルチ素材を餌と共に投入するなどをして嫌気性のヘドロを作り出さないようした上で、定期的に汲み取りをする必要がある。

 

ちなみに日本でもなんと10年以上前にその飼育施設に関する特許が出願されているが、これは循環継続式である。

この虫の生態に基づいたこのデザインとかなりマトを得ていて、商品化されたのか気になるがおそらくされていないのであろう。

 

一方、(2)バッチ方式は孵化した時期が近い蛆ごとに別々に飼育する方法で、幼虫から成虫までそれぞれ成長段階ごとに管理すれば良いので別々に環境要因を調整することで各成長と繁殖課程の管理を計画的にでき飼育スペースの取り方柔軟になる管理上の利点がある。

これまで散見した海外の蛆虫ファームの多くは各工程を蛆虫の数に応じて管理しているように見受けれる。
その他にも齢が近くサイズが同じ同士の成虫の交尾率とその卵の孵化率が高い、という記述もあるし成虫の限られた存命期間(4−5日)中に効率よく交尾産卵を促すため、またペットフードとして販売する際などは大きさが揃っている蛆をスクリーンする手間も省け便利である。

当然管理を計画通りに実行しないと当然ながら繁殖サイクルが止まってしまうので最小限の循環式を確立させ継続的に卵と蛹のバックアップをできる形にしておくのが理想的なのであろうか。