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蠢くウジが開く道

メリアブウジの長期保管技術

 

飼料産業情報のポータルサイトFeedNavigator.comの記事によると、

ブレットテクノロジーと呼ばれるメリアブの幼虫を容易に保存、輸送する技術がJeff Tomberlin と彼のリサーチチームによりテキサスA&M大学 ("Agricultural and Mechanical")にて開発された、とある。

www.feednavigator.com

このシステムはバターケース状の箱に孵化したての幼虫(およそ1kg)を冬眠状態で最長5ヶ月ほど必要になるまで室温で保管でき、さらにこのテクノロジーを利用することで通常10−14日間ほどかかるウジの生育期間を6−7日に短縮できるという。

このシステムについて書いてあることはこれだけなのだが、要するに卵から孵化したての最小サイズの幼虫を大量にその状態で保管できることで野菜のタネの様に孵化専門施設で大量に生産、保管し、有機廃棄物処理、あるいは動物飼料生産現場で必要な量を必要な時に発送、現場で即利用可能にするということである。

この技術を使うとメリアブの卵生産専門施設から幼齢幼虫を必要に応じて供給できることで各餌やり(現場での卵生産への投資と管理の必要性を取り払い、ニーズの変動が大きい小規模メリアブ飼育生産施設の稼働普及を広げることができる。

 

自分はこれにより個人やコミュニティ、地域の食品業者単位でのメリアブ活用を図り、生産者、販売業者、消費者を有機的に繋ぐエコシステムがいろんな所で構築されれば面白そうだ、と考えていたが、記事もこの分業によるメリアブ利用の単純化、専業化が目的としていてメリアブの利用が大規模飼料産業、廃棄物処理業を枠を超えて様々な現場で一気に拡大するきっかけになるやもしれない。

ちなみに記事によるところでは卵生産を決定的に安定化させる技術が開発された、というものではないようで、Tombelin教授自身もメリアブ産業の心臓部である成虫の飼育、生殖・繁殖が自分の研究の焦点あるとしつつ、その派生結果としてこのテクノロジーが開発されたというものらしい。

ということでまだ卵の生産にフォーカスを置いて取り組むのはまだ悪くない選択肢であるようである。

個人的に秋口に孵化させた幼齢一週間ほどであろう幼虫が冬眠状態で冬を乗り切ったこともあり、ただ単に冷蔵庫に入れば可能なのではと思っていたが、室温で保管可能とは一体どういうことか。

 

大学の記事によるとこの技術ライセンスを教授が取締り役を務めるEVO Conversion Systems, LLCに付与するとしているが、このEvo社からこの技術に関するコメントはまだなくこの技術が実際どうやって活用されるのか気になるところ。

 

もうちょっと調べてみたところ基本的には孵化したばかりの幼齢幼虫が1回目の脱皮をする前に発酵飼料が入った容器に投入し、溺死とその発酵資料が腐敗しないように適度な換気をしつつ室温で保存する、と言う至ってシンプルなものらしく、要するに実際に餌を食べなくても発酵した水分に接触していることで体力を維持し、餌にありつけるまでサバイブできる、ということを実験から確認した、と言うことではないだろうか。

 

実際に先に挙げた自身の経験も基本的には幼齢ウジが入っていたウジ餌は軽く自然に発酵していて、このブレットと同じ状況で一冬越すことができたのだろう。

屋外のシステムでも夏の間にしばらく寒い日が続き産卵している成虫を長期間見かけていないのに、その後生ゴミを投入するたびに元気がウジが湧いてくる事も多々あり何故なのか気になっていた。

毎回容器を空にして一定量の餌とウジ数で飼育するバッチ式でなく、餌を与え続け、下からウジ糞コンポストを回収するContinuous Flow 式(CF, 連続循環フロー/縦貫貫流。使っているハングリービンはCF式)で飼育した場合、上部で投入されたばかりの新鮮な生ゴミは成長真っ盛りのウジたちによって完全制圧されてしまい、孵化したての幼齢幼虫たちは餌にありつけていないわけだが、飼育資材が適度に発酵していていい感じの湿気と通気がありさえすれば、幼齢ウジが隅っこで餌にありつけるチャンスを長期間待ち続ける能力がある、ということがありがたく理解できた。

これは何か個別に応用できそうな知識かもしれない。

成長したウジが餌を食べ尽くし餌切れ気味の容器でも常に産卵を促すための発酵資材を仕掛けて産卵はし続けてもらう、というのは重要かもしれない。

その場合どれくらいの幼齢ウジがそこのいるのか、どれぐらい生ゴミを投入してもいいかわからない、という問題がある。

卵を産んでもらう場所を限定することで、カメラで産卵回数を記録して予測することは出来そうだが、その予測が正しいかどうかも確認できないので、育ったウジを回収するシステムに使うのはやはり不向きかもしれないが、いずれにしても発酵した資材を常備して生ゴミと共に投入することで安定したウジの成長をサポートすることになる、ということであろう。

つまり以前の記事にしたカルピス材料の投入はやはり大事な工程だということが改めてわかった気がする。

commonknowledgeinsect.nz