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蠢くウジが開く道

ペットフードとしてのアメリカミズアブ

2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」、脱炭素社会の実現を目指すことが人類の当面の共通したゴールとして設定されて久しいのですが実際私たち庶民は何ができるのでしょうか。

ondankataisaku.env.go.jp

目に見えない炭素の排出量についてその算出方法や影響などかなり個人レベルで理解するのは難しそうですが、根源的な問題として最も身近な食料の生産と廃棄プロセスがもらたす環境への負荷が問題視されてきたは確か。

コロナ渦に伴いペットの数も世界的に増加しているそうで、当然そのペットフードの需要も増え、メリアブもサステイナブルなタンパク質源として、そしてプレミアムプライスがつく最大の市場である犬や猫のペットフードに利用され始めました。

wired.jp

さて今回はムシがペットフードとして良し、とされる以下の3つの理由(ペットフード業界目線かも知れませんが)についてが備忘録的にまとめてみます。

 

1:温暖化ガスの排出量

やや古いデータ感はありますが国連食糧農業機関(FAO, 2013)によると、世界の温室効果ガスの総排出量のうち、畜産業だけで14%に上り、その中で特に多く排出するのが牛で、畜産業全体の65%を占めるそうです。

畜産には餌が必要となりますが世界の耕作可能な面積のうちおよそ1/3が家畜飼料生産のために使われおり、世界で収穫される75%の大豆は家畜の飼料として利用されているとのこと。

すなわちお肉を生産するためには多大なスペース、水、餌(そして大量の糞を多くの場合環境に垂れ流し)が必要で需要の増加に伴う飼育と飼料栽培のためにあらたな開発が必要となり、多くの場合森林(熱帯雨林)を切り開く開発を余儀なくされる。

 

ちなみに余談ですが、美しいワイルドな自然環境、という観光的イメージの強いニュージーランドですが、以前の羊ばっかりという印象とは変わって今は世界各国での需要増を受けて牛肉と乳製品が国の主要輸出品となり、街を出るとほぼ牛の牧草地、という印象です。

wealth.nna-au.com

そんな中、牧草を年中保つために窒素肥料の大量使用とその余剰栄養、糞尿の水環境への流出により、国中ほとんどの河川に置いて富栄養化の結果として毒素をもつ藻の発生(ナウシカの世界のようです)等により泳ぐのとが禁止されているという状況は大きな政治的経済的問題となっています。

www.youtube.com

ドキュメンタリーCowspiracy(邦題:サステイナビリティ(持続可能性)の秘密、2014)を見て、自分の周りも牛だらけなんだけど、実際どうなの?と思って調べたらびっくりした、というCowspiracyのニュージーランド版ドキュメンタリ「Milked」も大変話題となり、地域とグローバル環境に与える影響がデータとしてこれだけ出される中、グラスフェッド、ファクトリーファーミングを問わず技術革新等で環境負荷を改善されないのであれば、牛産業の未来について政治的決断をニュージランドが取らなければならない日が近いうちに来るのかも知れない。

www.youtube.com

話は戻り、開発国において世界の食肉需要を満たす為の家畜産業拡大のために未開発の熱帯林が失われると地球の炭素の貯蔵庫としての機能や大気の調節機能が損なわれ、温暖化を加速させてしまうということで、一般的にこれ以上お肉、特に牛肉の生産量を増やすというのはグローバル、ローカル双方の環境に対する影響という点でかなり課題が多いということになる。

adaptation-platform.nies.go.jp

 

2:生産効率

その点近年増えてきた昆虫産業はこのライフスタイルの変換による環境改善を謳っており、温暖化ガスの排出量と生産効率における利点を比較する資料を多く見かける。

数値は資料によりまちまちであるが、あくまで感覚的な比較として食べられる肉を1kg作るのに必要な乾燥飼料、水、排出される温暖化ガスの比較は:

コオロギ 1.7kgと4Lと0.1kg、

ニワトリ 2.5kgと2,300Lと0.3kg、

ブタ   5kgと3,500Lと1.1kg、

ウシ   10kgと22,000Lと2.8kg、

となりかなり昆虫は効率よく生産でき、温暖化ガス的にもかなり地球にマイルドであることがわかる。

長野伊那谷観光のHPより拝借しました。

栄養価に関しても昆虫食100グラムに含まれるタンパク質は27.6グラム。一方、同量の豚肉、鶏肉、マグロ肉の場合はそれぞれ19.5~24.9グラムに過ぎないという。大方部位に分けず全てを丸ごといただく昆虫食の場合、微量元素も摂取できてバランスがよいということ。

 

3:アレルギー対策

様々な食物アレルギーがペットにも出てきているが、昆虫ベースのペットフードはアレルギー対策としても有効であると言われ、低アレルギーペットフードとして売り出されているものも多い。

アメリカミズアブのペットフードとしての利用は熱帯魚や爬虫類が中心であったがドックフード、キャットフードとしても差別化を図る専門ブランドだけでなく大手のペットフードメーカーがアメリカミズアブ を原料として使い始めたのも頷ける。

www.iqi-petfood.com

www.afpbb.com

なんとそのまま食べてくれる犬もいるようです!

メルアブウジの腸内菌はそれを食べた動物の免疫力を高めるとの研究もあり、これからのヒップなワンちゃんオーナーはサステイナブルで健康的なメリアブを選択して行くのではないでしょうか。

www.youtube.com

まとめとしては:

人口が8億人を突破しようとしている今、人口増の中心である開発国でも経済の発展とともに動物性タンパク質の消費は増える一方。人口が20%増えるだけで食料生産は70%増やさないと賄えないとする試算もある中、肉食を中心とするペットの数も増加の一途を辿っている。

世界的な家畜産業の拡大は餌の生産も含めると広大な土地、水、農薬、肥料など大変なエネルギーが必要とし、牧草地からの地域環境の汚染や密集飼育による人畜共通感染症の発生やそのウィルスの強毒化を加速させてしまう懸念リスクもある。

そんな今一体何を食べればいいのか。生きているということはお腹が減るという事で知れば知るほど悩みは増えそうです。

とりあえずメリアブを使っているペットフードの製造企業研究を通してローインパクトに収まる食システムについて思いを広げて見ましょう。