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蠢くウジが開く道

Eco anxiety(エコ不安症)から考えるローカルなメリアブシステムの価値

 

デジタルインパクトメディア「5Media」のEco anxiety(エコ不安症)に関する記事を読んでコミュニティーでの小規模メリアブファームがその対処ツールになりそうな気がしたので備忘録的にまとめてみます。

Eco anxiety(エコ不安症)とは

この所メディアから伝わる悪化しつつあるという気候変動関連問題について懸念しながらも見聞きし続けることでその問題に対して圧倒的に自分が無力であるという感覚が増幅され、結果多くの人々が日々慢性的な恐怖心(不安、無力、喪失、絶望、罪悪、怒りなど)に苛まれることがことが増えてきているそうです。
 

fivemedia.com

Climate anxiety(気候不安症)など様々な呼び名があるようですが、この5Mediaの記事ではEco anxietyがかなり一般的になっている事、今後なくなる事がないであろう事を含めてこのEco anxietyを皆で理解し、受け止め、そこから学び行動する事で共に前を向いて暮らしていくための提言をしています。

 

Eco anxietyは個々のメンタルの状況(元気であろうが落ち込み気味であろうが)に関わらず独立的に存在しそれぞれに何らかの影響を及ぼすものとして考えられるようで以下の側面があるとしています。

 
Affective symptoms:心配や不安を感じる情緒障害
Rumination:思いについて繰り返し考察し続ける反芻
Behavioural symptoms:睡眠、仕事、勉学、社交活動に影響を与える行動に関する症状
Anxiety:自身がこの惑星に与える影響に関する心配と不安
 
これらを踏まえてこのEco-anxietyがそれぞれ個人とこの惑星のWell-being(ウェルビーイング)にどのような意味があるのか検証し理解した上でその不安や心配度合いに合わせて対処するための認知行動感情的な4つのアプローチを紹介しています。(ちなみにこのwell-beingという単語、オンラインで翻訳すると豊さや幸福という訳以外に塩梅(あんばい)、という訳が出てきて健康状態の具合や程あい、という意味ではなかなかの名訳ではないかと勝手に感心しています。)
 
さてここで紹介されている4つの対処法は以下の通り。
Validation:不安やストレスを感じる状況を検証し、それが理にかなっているものであると認め受け入れる。
Time out:精神的なゆとりとバランスを取るためにニュースやメディア等を見続ける時間を減らし意識的に避ける。
Seek hope:問題の複雑さを重視しつつも、オルタナティブな未来へのビジョンを模索し協同連帯する事でそれが実現できるという希望を醸成する。
Take action:それぞれが立ち居振る舞いを変えたり、キャンペーンやプロジェクトを立ち上げたり参加するなど、とにかく未来に向かって行動する。
以上の4点を意識的に普段の生活に取り入れる事で個人が陥りがちな気候変動にまつわる心理的なネガティブループに対処できるのではないか、とまとめています。
 

ここで連帯、希望、行動というのが何かこのEco-anxietyに対処するキーワードのように示唆されているのは、地球環境危機が人類として直面する最大の集団行動的課題であるとされる中、必要な変化や改善も個人、産業、政府などが集合的に連帯してアクションを起こしてこそ得られると考えられること、そして人類がこれまでどんな困難に立ち向かってきた際に、状況が必ず改善される未来に対する希望、健全な精神と肉体を保つことで乗り越えてきた歴史からの学びが根拠であろうと思われます。

で、こんなご時世一庶民はとして一体何ができるのか。

その場所で、そこにあるもので出来ること

現状において産業間の利用重視で研究が進むメリアブテクノロジーへのさらなる理解が、よりローカルな小型システムの開発、学校などのコミュニティースペースでの学習と行動を起こすための庶民ツールとしてのコレクティブ(連帯した)なメリアブ利用を可能のするのではと思っているところ。

木を見て森を見ぬ

メリアブ利用に関して最近思うのは人類の目先の欲であるInsect as Feed and Food、ムシを餌と食料として見る”代替タンパク質生産”はとりあえず食品産業に任せ、都市部の「責任ある消費者」として日常生活を通して如何にメリアブという虫の力の恩恵に与ることができるか考える視点を持つことが面白いのではと。
そのためにはまず我々人間がウジやミミズと同じ生態系の一部であることを認識した上で、日常生活と経済活動を通してこれまで破壊して来た多様な生態系サービスの回復支援、そして拡張できる仕組みづくりが必要ではないかと思います。
アーバンフォレストグリーンインフラストラクチャーなどがその例だと思われますが、そのシステムの機能を維持し拡張するための基盤として重要な健全な土壌(ソイルフードウェブ)を作るシステムが抜けている気がしています。
そこを機会として捉え、生ゴミをメリアブに食べさせ土壌を構成する貴重な土壌有機物となる昆虫排泄物たるウジ糞の生産、利用する仕組み(というかシンプルにウジ利用の生ゴミコンポストと土づくりです)として組み込むことで、我々一庶民がそこにいながら生態系サービスの維持拡張に直接関与貢献する機会を創出できるということで、メリアブの持つ優れた有機物分解力とその扱いやすさに注目、最適化することで「食べる」ことで生態系に繋がり、生物多様性の破壊ではなく拡張に貢献しながら、地域における食文化の発展も図れるのではないか、と思う訳です。
土づくりとしてのコンポスト、という意味でも本来の森での生態系階層で見た場合、メリアブが他のハエと共に一番先にそのマナモノにありつく昆虫であることを考えると、ミミズや微生物に生ゴミを処理を一択してお願いしているのは流石に無理があるのは明白。
これらの選ばれし有機物分解者たちに手分けしてもらい効率よく良質な生命の根源たる土を生ゴミから作る仕組みを自分達の街角に見える形で作る、ということは一般市民が食べ物を消費し残り物を廃棄するという行為を生物のライフサイクルにおける循環として捉える意識変革と、値段や味の背景にある食べ物の生産を支える生態系に対する想像力とリテラシーを持つための重要なツールになり得ると考えています。
 
これは現在ケルマーナガーデンズに提案しているプロジェクトそのもので、メリアブでグッと生ゴミの体積を減らした上でミミズ、ホットコンポスト(可能であればきのこ類)と共に理にかなう形で処理系統をデザインし土壌改善用有機資材商品の製造プロセスを開発、できた資材を畑で利用すると共にご自宅用や業務用として販売し利益を出すこと。
またそのスペースでは生ゴミをウジの餌として捉え、ウジへの餌やり、出てきたウジをまた野鳥や鶏に餌やり、と言う異なる生態系の階層における餌やりダブル体験を提供する場として捉えることも可能で、加えてそのウジをペットフードとしても販売するシステムが出来るわけです。
この工程を平準化して確立しボランティアを中心に学びながら体験する場として提供しながら利益を上げることができれば、今回のお題であるEco anxiety対策である「コレクティブにポジティブ行動をとる」場と機会となるので今後恒久的に需要がある社会インフラ、ソーシャルビジネスになのではと思うところ。
この仕組みはケルマーナガーデンズのコンセプトでもある再生農法とサステイナブルな食生産について学び、行動をとるための場としてのアーバンファームや、都市部での森づくりをススメる「タイニーフォレスト」的な体験と自然を繋ぎ、都市部の生活をより豊かにする取り組みと合致するし、それに「餌やり」という楽しみと実際に「ゴミがその場で資源」となるという問題解決の可視化と体験提供、収益を上げるツールとしてそれなりに有効ではないかと勝手に盛り(森)上がっている。

餌やりという体験と喜び

このウジX餌やりは最近懇意にしてもらってる昆虫テーマの博士課程で忙しい師匠が時間ができたらリサーチプロジェクトを一緒にやらないか、と誘ってもらっているのでぜひこの”餌やり体験としての公共メリアブシステムのソーシャルな価値”というテーマで検証してもらいたい所です。
 
ウジ飼育を餌やり体験として捉えた方はまだ少数派かと思われますが、私がウジコンとして使っているのは表面積がおよそ60x60センチのミミズコンポスト、そこに食べ残しのパスタやら果物やら高カロリーの生ゴミを投入しその後覗き見した際に隙間なく沸き立ち蠢くウジからもらえるバイブはなかなかのものです(蓋開けると光に反応してすぐに下に潜ってしまいますが)。
それでまた回収したウジを鶏にやると、かなりの勢いで啄むのですが、これがまた不思議な感覚で何か自分が巡り巡るイノチを繋いでいる大きな何かに包まれたような気分になるのは気のせいでしょうか。
動物やペットに餌をやる行為のポジティブな影響はすでに確認されているので、それが犬だろうが魚だろうがウジだろうが野鳥だろうが同じはずで、以下の記事では餌やりの効果として血圧を下げ、不安を取り除き、うつ状態の改善があるとしています。
 
生ゴミを資源として捉え、あくまで有機物の分解者、シュレッダーであるメリアブの排泄物を基に全ての命の源である土を作る生態系サービスを提供するシステムとして、また自然の摂理にしたがった餌やり体験というローカルな文化系サービスも提供できるメリアブシステム。
そこでできる土を使ってコミュニティースペース、学校や自家菜園で食べ物を作ることでグローバルで工業的な食品にやや疲れた人々のローカルな食文化を養う場、サーキュラーエコノミーの実践モデルとしても社会的価値と需要が見込めるのではないでしょうか。
これはリサイクルとかゴミゼロとか炭素排出炭素云々という話の枠を超えた、ローカルな生態系サービスプロバイダーとして生命の繋がりに回帰するポジティブでエンライティングな老も若きも楽しめるライフロングラーニングエクスペリエンス(生涯学習)なのではと思います。
 
ということで妄想しているその小型メリアブシステムのローカル利用にどれくらいの需要、経済的価値と検証可能な意義があるか模索している所だったので、今回の5Mediaの記事を読んで少なくともメリアブに生ゴミをやり、メリアブを鶏にやりながらウジフン製造システムを地域のそこら中でせっせと機能させて豊かな土壌の作り続ける未来にむけて皆で連帯し歩みを進める取り組みがまさにEco-anxiety時代の一つのグローバルなモデルツールとなりうるのではないかと思うに至るわけです。
 
とりあえずは今取り組んでいるプロトタイプがどれくらいの性能を発揮してインパクトを与えることができるのか、地域の皆さんの賛同を得られるか。モジュラーでスケーラブルか、果たしてそれは次世代を担う
若者の不安を払拭する希望を見出せるのか、など、社会的価値があるとして、それを如何に経済的価値に変換、職を作り人々の生活の中に組み込んでいけるのか検証し見極めて行く所存でございます。
長々読んでいただきありがとうございました。