昨年少量ながらもガレージのテント内での産卵から孵化が日常的に発生し、裏庭でボカシた生ごみの爆食い、そしてまるまる太った前蛹をテントのサナギルーム戻し、羽化から交尾へのサイクルが回り始めたのもつかのま、年末年始の家族での冬の日本への一時帰国の旅で中断を余儀なくされていました。
中断に先立ち12月頭にテント内にいた成虫を太陽に下で解放、交尾用テントの洗浄をして生育中だった幼虫たちはネズミやら野鳥に食べられないように軒下に重ねたコンテナ内に放置。
一か月ほど家を離れて夏の日差しもすっかり強くなったオークランドに帰ってきて気づいたことなどをまとめてみます。
まずコンテナ(平たい30L)内の前蛹ですが、おそらく半分ぐらいはサナギとなりコンテナ内で羽化し飛び立った模様。コンテナのふちに成虫の大量の白い糞が残っていて、成虫になったメリアブが飛び立つ前にそこそこの時間をコンテナの淵で過ごした様子が伺えました。
中にはまだ相当数の前蛹が抜け殻に交じって蠢いていて、運転再開には十分そうだだという事に胸をなでおろすと同時に、まだまだ残っていた大量の蠢く前蛹が、ガレージ内の「ブリーディングテント」という内燃機関のようなシステムに投入する燃料、のように思えてしまったのは近代産業のための教育を受けた庶民的なバイアスなのでしょうか。したところでした。
その羽化したもののすぐに飛び立たない成虫をついばみに多くの野鳥が集まっていたらしく、軒下のコンクリには鳥糞がめだち、その後観察していると裏庭の塀の上から様子を伺い、人がいないとみてはコンテナ回りに降り立ち、新世界の明るさに困惑しながらこれから飛び立たん、としているメリアブを見つけては難なくお命頂戴、という、そのコンテナ周りが生餌バードフィーダー状態になっていました。
よく来ているのは通称Blackbird(マオリ名:Manu pango、和名:クロウタドリ/黒歌鳥、学名:Turdus merula)のようですが、メリアブをゲットした一羽が塀の上に戻り、待っていた小鳥に餌を口移する光景をみたときは、何か脳みそに感動物質が放出され軽微な多幸感に浸ってしまいました。その脳内物質が放たれたメカニズムは何なのか、それはその餌となったメリアブの成長に関わっている事とどれくらい関係しているのか、売っているバードフィーダーを使っても同じような感覚に襲われるのか、興味深いところです。
とはいえ一般に野生動物に餌を与えないでください、といわれている理由もかなり全うで、野鳥にもそれなりに当てはまると思われるのでほどほどに、ということだと思いますし、多様な生物種との相互作用や関係性を考えるマルチスピーシーズ(Multispecies)の視点を念頭に置くと、漬物にした生ごみを餌に裏庭で生産されるメリアブを外部生態系に献上するときに果たして鳥類だけを優遇し、ネズミやら他のハエなどを完全な害獣害虫とするのが長期的な人間と環境との関係性においてどうなのか。
そもそもトリしかいなかったNZなので自然だ、と言えるのかもですし、生ごみをより多くの(窒素とリンを多く含む)土壌有機物となる鳥糞(Guano?) として地域に循環させる多様な都市土壌回復の仕組みの一つになるのかもしれません。
とは言え身の回りの鳥による健康被害についてもいろいろあるようで、何事もほどほどに、というところでしょうか。
とはいえいろいろな危機を作り出している現在のあたりまえがあたりまえでなくなっている未来において現在我々が益虫害獣害虫として扱っている生き物の立場がその機能をうまく活かすことで見直されていることがあるのか、など、考え出すときりがありません。。
そんなことでわざわざやって見ようと思ったことはあってもやったことのないバードフィーディングですが、様子をライブストリームしたり、撮影した動画なども多くあり、これはメリアブ飼育のもう一つのおまけ的な「楽しみ」として、定義された何かのあいだの存在として良し悪しを定義する必要がないのかもしれません。
ということでエサとして扱われる幼虫、再生産の種虫として扱われる成虫、そんな人間中心視点を放棄し放置したら野鳥が喜んだ、というお話でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。