All about that bug

蠢くウジが開く道

アメリカミズアブ の屋外での卵採取

ケルマーナガーデンズソイルファクトリーが週一で回収するご近所の生ゴミはいわゆるホットコンポスト方式で処理されるわけだが、そぞろ持ち込まれる分は金曜日の仕込みまでコンポスト箱脇に設置されたプラバケツに一時保管される。

 
観察しているとメリアブの成虫がバケツの周りをブンブン飛び回り卵を産みつける場所を探しているのだが、メリアブは飛ぶ速度が遅く捕まえやすいのかそのメリアブを狙って野鳥が勢いよく代わる代わる飛び込んでくる。

産卵しに川を上ってくるにサケを狙って熊が集まって来るような命がけで命を繋ぐドラマがまさにここでも繰り広げられている。。。
さて実際使われているバケツは形状的にもちょうど良い産みつけ場所がない模様で、日当たりの良い場所に置かれた黒いプラバケツ表面はアツアツということもあり匂いに惹かれて飛んでくるも産卵までは至らずに飛び去ってしまう。

コンポスト箱の隙間に卵を埋め込んでいる成虫も多く見られ、指をくわえて見ているわけにはいかないのでその黒バケツを加工させてもらって産卵用の段ボール等を設置する案も考えたが、自前で蓋に穴をあけてあるバケツを使い、その上に木材を束ねた産卵材(通称Eggiesエッギィズ)を設置して様子をみることにした。

別バケツの上に卵採取部材を設置


 
翌日見にくるとなかなかいい量が産み込まれていて毎日これくら卵が採れるならかなり試験目的としては悪くない。

当初はInzectdirect(以前自分から幾度もキロ単位でウジを購入してくれた今ではN Zで唯一のメリアブファームを擁するこおろぎ屋さん)から初めて購入(というか法外な高値で買い戻しの気分)したメリアブウジ千匹(送料別30NZ$)を自前コンポスト容器に入れ、その匂いでメリアブの産卵を誘い卵採取をする段取りでいたのだが、うまくいかず四苦八苦していたのでかなり拍子抜けの大漁度合い。というかこれだけ近くにこのサイズのコンポスト箱があればそれは小さい方に惹かれないのは当然かもしれない。

とはいえこの卵の量から一体どれくらいのウジを育てることができて、どれくらいの有機物を処理できるのか。卵の収穫量をみておおよその数字的な見積もりくらいはできねばならない。
ということで0.01gまで計れるデジタルスケールを購入し採取する卵の重さを測ってみることに。
どうやら卵一つの重さはおよそ25μg(マイクログラム、1gの100万分の1で0.000025g)で
一匹が産卵する卵クラスターに含まれる数はおよそ400から800個で通常四日以内に孵化ということ。

2〜3日毎、週三回に採取すれば産みつけられた卵がその回収場で孵化する前に回収できることになる。
記念すべき第一回の重さ測定の結果は0.49g、その二日後の採取も0.51gでこれは以前自宅裏庭で販売用に飼育していた時に採取していた時は見たこともない量の金の卵である。

これはそこそこ大漁です



これを卵の単位重量(25μg/卵)から換算するとそれぞれおおよそ、18,800と20,400個。

1匹が産み落とす卵クラスター含まれる卵の数が400から800だと言われているので、このエッギィズの隙間にお尻を差し込んで卵を産んでくれた母なるメリアブの数はおよそ25匹から50匹。もはや産卵する隙間が足りなくなっている説もあり、次回はもう少し薄い板を使って隙間スペースの増設して収穫数のアップを図ることとする。

ちなみに重さを測定できなかったその前の時より産卵用の束ねた木片の間の隙間を木ネジを使って広げたのだが、圧倒的に産卵数が増えたのはそのせいなのか他の環境要因なのか。ちなみにこの卵を産ませる部材間の隙間について、EVO Conversionが売っている業務用卵回収器は25年の研究の結果から1130μm(1.13mm)の隙間が最適としています。

この板状の部材を卵回収に使うのはいわゆる失敗の許されない処理用の大きい産業用のバッチ式飼育システムにおいて処理する有機物量に見あった数の幼齢ウジを供給するために一度卵を個別に計量して管理する必要があり、卵を削ぎ取って回収する工程を容易にする都合があるためです。

一方、ウジ餌量とウジ数のバランスがそれほどシビアである必要のない小規模の場合や循環式飼育をする際は基本的に卵が定期的に産み付けられてさえいれば問題ないので卵産み付け部材の形状に自由度があり、段ボールや細い溝が付いた配線保護パイプなどいろいろ使われていますが今後メリアブ飼育が一般にも普及する可能性を考えると一般向けにオリジナル卵産み付け部材商品を開発する価値はありありなのではと踏んでおります。

個人的にはメスはお尻の先を空隙に入れてみて産むか産まないかを判断しているようなので、このお尻の形状と産み付けやすい場所との関係に着目して何か使いやすくて理に適ったモノをデザインできればと目論んでおります。

youtu.be


どこか見つけたか忘れてしまったが、以前段ボールを卵採取に使用する場合、空隙の狭い段ボールより大きいものの方が産卵する卵の量が増える、という研究について読んだことがあるが、これはどういう意味だったのか。

お腹から押し出す卵が無理なく収まるスペースが無くなったと分かって産卵を中断してしまうのか、ともかくお尻を入れたときに産むのに適している、とまず判断してもらう形状で、さらに一匹が産む最大量の卵を収めるスペースがある、という二つの条件を満たす必要があるだろう。

さて孵化率と孵化後のサバイバル率を100%として(産業用に計画する際には様々な条件によって孵化率と生存率がそれぞれ80-90%らしく最終的には総卵数の65−80%をウジの収穫量として計算するらしい)全部が最後まで育ったとすると一体どれくらいの量になるのか。

最終齢のウジの重さが大体0.15から0.25g(大きいものは0.4g)とされているので間を取って0.2gとするとこの卵の量から3.8kg前後の活メリアブウジの収穫となる。以前100gを送料別で25$NZで売っていたので、換算するとなんとこの一回の卵の収穫高の潜在価値は驚愕の末端価格950NZ$相当に匹敵するということになる。

 

ちなみにメリアブのウジによる有機物のバイオコンバージョン(生物変換)率は湿重量ベースで10-25%と言われており、環境と栄養条件が整いこの0.2gのウジが生物変換率25%で育つとすればこの18,800匹のウジで15kg弱の有機廃棄物が餌として必要(0.8gの餌/ウジ/ライフサイクル)、同じサイズのウジが変換率10%で育つなら必要な餌は38kg(2g/ウジ)と幅が広い。
要するに当然ながら栄養価の高いウジ餌なら少ない量でまるまる太ったウジにとって変わり、そうでなければ同じサイズになるまで餌の量または時間がかかるという話であり、ゴミ処理をするために飼育するのか、手っ取り早く売れるサイズのウジを育てるのかで飼育のアプローチを変える必要がある。まずは使う有機物の質と量と飼育環境を定めてメリアブの成長度合いを把握し、成長に影響ありそうな因子を調整しながら、効率の上がる条件を見つけていく感じだろうか。

ソイルファクトリー担当者とこの先メリアブファームを実際どのようにケルマーナガーデンズの中で位置付けるかという話になり、ガーデンの長期的な運営の安定に寄与する収入源となるシステムの構築を目指すのが望ましいということになった。

この卵の収穫量をキープできるのであれば飼っている5羽分のプロテイン量を補うことは全く問題なく、余剰分は新たにブランディングしてペットフードとして売り出すのも悪くない。

とりあえずは、来る夏の終わりに向け室内での安定した卵の収穫とウジ餌と飼育環境による成長度合いのモニタリングをできる施設を整備し効率的な運転方法を模索する方向で進めようかと相談中。