All about that bug

蠢くウジが開く道

アメリカミズアブの裏庭飼育(のアップデート) ー ボカシの活用

今後世界で様々なスケールのメリアブファームが普及、稼働していくのだろうと思われますが、市民に開かれた小中規模の分散型メリアブファームのネットワークがこれからの人新世(アントロポセン)における都市環境のウェルビーイングを守る基盤クリティカルビジネスとなるのではないでしょうか。

 

多くの人がこの虫と関わる意味、関わり方、そしてそれまつわる言葉の意味について体験を通して考え、それぞれが地元コミュニティーと自然生態系との新しいつながりを持つ機会を得ることができるのではないか、と妄想しております。

そんな中すっかり滞っているコミュニティーガーデンでのメリアブ実装実験プロジェクト遂行のボトルネックになっていた自宅でのメリアブブリーディングにやや進展があったので、その過程などを備忘録的にまとめて行きます。

 

今回は久々に動き出したウジコン、裏庭メリアブファームに餌として投入する生ゴミの前処理、保管に利用する発酵についての考察です。

 

今年に入ってから本格的に我が家のガーレージでのメリアブ繁殖(Breeding)実験を初めてはやもうそろそろ一年。

これはオークランド市から補助金をもらって取り組み始めたコミュニティーガーデンでのBSFプロジェクトに幼齢ラルバ(AIがLarvaeをラルバというカタカナに翻訳してきたのでこの記事ではそう呼んでみます)を定期的に提供する基盤を構築する試みで、それによりガーデンのビニールハウス内での生ゴミのバイオコンバージョンプロセス(昆虫タンパク質と昆虫排泄物(Frass)の生産)可視化、そのインプットとアウトプットの計測、アウトプットであるメリアブのラルバ(鶏餌)と以前の記事でも挙げた循環型土壌基材としての注目度合いが増す昆虫排泄物(Frass)の活用実験、コミュニティーでのメリアブ飼育体験の共有、などを夏の風物詩でなく通年持続可能にしようというものです。

この手のウジコン体験機会がよりAccessible、手に届く、気軽に触れられるようにすることで、より大きなフードシステムや社会環境システムの変革のネタとなる体験、疑問や感情が湧き上がる泉の源泉になり、都市での自然環境や生物多様性を豊かにするためのデザインの実践ツールとしてソーシャルなメリアブビジネスが世に蔓延る未来を見ています。

とは言え、そもそも幼齢幼虫の安定供給なしにこの手のプロジェクトが成立しないのは想像できるのですが、それを一回野外で挑戦することで、やっぱり室内の繁殖システムが必要です、と言う結論を導いた、と言うのもあるのですが、言うは易しとは本当によく言ったもので、こうやってこの記事を書いている間も繁殖関連やら何やらコマゴマとした作業がリストに溜まっており、建てたビニールハウスはまだ空き家状態、これはもう大いなる神から授けられた偉大な趣味、この困難を楽しみつつ淡々とできることをするのみ、と開き直っております。

 

そんな感じですがようやく少量ではあるもののGrowTent内で蛹の羽化から交尾、産卵、孵化まで回るようになり、いわゆる5DOL(5Day Old Larvae:孵化5日目のラルバ)をブランとコーヒー殻ミックスの基材を使って収穫できるようになってきました。

youtube.com

この幼齢幼虫を(家族の目の止まらないように)裏庭に持っていき、メリアブ専用のコンテナで餌を与えて育て、繁殖交尾用のラルバを確保した上で、残りは鳥餌サンプルとして配ったり、売ったりしつつ、コミュニティーガーデンでのワークショップや餌やり体験などの資材としての利用を想定しております。

継続的な幼齢幼虫の確保によってHungy BinのようなContinuous flow (フロースルー型と言うのでしょうか)の扱いの利点はそのままに、通気性と排水性を高めた使い勝手のいいメリアブファームが開発できるのではないか、そしての使い勝手をコミュニティーで検証してみよう、と言う訳です。

文献とChatGPTをもとにガレージ内で使っているLove Cageでの飼育環境で計算上どれほどの卵が収穫できるのか皮算用するとテント内に5000匹ほどのメリアブ密度を維持することができれば歩合を考慮しても一日10g以上取れると言う。それは現状からするとおぞましい数ではあるが、テント(Love Cage)内のメリアブ密度を5000匹に維持できればなんとかなるのかもしれない、とも思えてくる。

そのための(丸々太った)前蛹:Pre-Pupaの継続的な補充、その為の継続的なブリーディング用のメリアブファームでの最適化された餌やりが必要になってくるわけです。

 

前置きが長くなりましたが、今のところ孵化したようれ幼虫はこちらNZで売られているボカシコンポスト容器にためてある我が家の台所生ゴミの中に30Lコンテナの中でまぜ、あとはその驚きの減り具合と舞い踊るように群がるラルバを日々眺め、とりあえずは繁殖用のタネ蛹ラルバの安定生産、そしてまだまだ下がっていない末端価格を鑑み、ペット餌、裏庭鶏餌としの販売戦略を妄想する日々です。

ちなみにこのボカシコンポスト容器は生ゴミを密閉容器で乳酸菌、酵母、菌類などを混合したいわゆる有用微生物群(EM菌)を嫌気状態で発酵させピクルス状にして、仕上がったものを庭に埋めて利用するものです。

www.zingbokashi.co.nz

このボカシコンポスト製品はミミズが得意としない柑橘類や肉、乳製品も簡単にコンポスト化できる、と言う謳い文句で普及しているので買ってみたのですが、実際にこの容器が二つ無いと一つが満タンになり発酵が完了するまでの間生ゴミが処理できない事、実際に発酵し終わった10−15Lのボカした元生ゴミの塊を実際に埋めるほどの畑や環境もない、と言うことで使っていませんでした。

 

ボカシ発酵がメリアブラルバのバイオマス量と成長速度を向上、発育期間の劇的な短縮に貢献するとの研究があり、これは安定的に卵が確保できるなら餌はボカシ一択だな、と妄想しておりました。

(参照:Impact of bokashi fermentation on life-history traits of black soldier fly Hermetia illucens (Diptera: Stratiomyidae) larvae )

これは以前のカルピス記事でも取り上げた飼料の発酵プロセスであり、その記事では酸素が発育に必要な好気性菌の枯草菌の話で、実際に裏庭スケールで利用するのは環境管理をするための別施設が必要で現実的でないかも、と言う印象であった。

commonknowledgeinsect.nz

 

それに比べてこのボカシ方式は嫌気性菌を利用する密閉式なので(開けると独特の酸っぱいそれなりの匂いはしますが)どんな種類の生ゴミも完全放置でコバエや他の虫たち、微生物群に立ち入る隙を与えず保存しながら発酵処理できるのでメリアブ餌としてのストックには最適です。

今のところ一つしか所有していないので、発酵が終わっていないブツを上の方から餌として使う事も多く、発酵の利点を享受しているとは言えないのですが、「生ゴミ」を安全に保存し使いたい時に使いたい分だけ使える、と言うのはかなり便利。

(上から投入して下から発酵が進んだモノを取り出せる仕組みがあれば良いのだが。。)

二重構造で下には土壌微生物にとっての栄養満載、と謳われているボカシ汁を回収できるようになっており、発酵を経て水分もそれなりに抜けるのがラルバ餌としてもまた乙です。

 

逆にこれなしに、台所からその日の生ゴミを直接ラルバファームに投入するとついつい幼虫量に対して餌(生ゴミ)のやり過ぎを招き、地獄を見ることになりかねません。

と言う事でボカシバケツ、ラルバの健やかな成長を腸内細菌から支え、繋ぐ命のウェルビーイングを高めそう、と言うことで使い勝手も含めて小型メリアブファームにはかなりおすすめです。

 

 

余談ですがこの食品残渣の飼料利用のための発酵処理の関連ネタとして地元NZのメディア(↓はBBCですが)が日本の食品残渣リサイクル会社J.FEC(ジェイ・フェック) ―JAPAN FOOD ECOLOGY CENTERのシステムを記事にしていた事を思い出しました。

記事によるとこの会社は食品残渣を乳酸発酵させて高品質な養豚用の長期保存可能な液体飼料に転換する事業を営んでおり、液肥生産に適さない有機物はメタン発酵させ回収したメタンガスで事業で使うための発電している、とのこと。

この液体飼料は豚の成長や肉質に合わせて栄養価を調整でき、特定のアミノ酸(リジンなど)を増やすことで、脂肪や筋肉の増加をコントロールする事も可能だとか。

施設では年間35,000トンの食品廃棄物を処理しており(1日あたり約40トン)、技術の特許を取得せずに、他社が同様の方法を採用できるようにしているので日本国内で同様の施設が増えて、年間100万トン以上のエコフィードが生産されているとのこと。

微生物と発酵の可能性はまだまだ開発の余地がありそうです。

 

www.bbc.com

 

と言うわけで、今後また自宅スケールでの蛹の羽化、交尾と産卵、孵化と餌やりプロセスに関する細々としたネタを共有して行きます。

 

読んで頂きありがとうございました。