All about that bug

蠢くウジが開く道

アメリカミズアブのラービーの食べ方

日頃お世話になっているKelmerna Gardensには、近所の学校からガーデンにやってきて見学やら作業体験をするプログラムがあり、週何回かグループで虫眼鏡やらノートを持った小学生がワイワイやってくる。

その見学コースの中にミミズコンポストと並んで働く昆虫シリーズ的にメリアブ飼育を加わえるのも悪くないということで、ガーデンの教育プログラム担当で高知の仁淀川町で英語教師としての滞在経験から猿渡茶のニュージーランドへの輸入販売をしていたこともあるショーンさんといろいろ話をしていると、近々プロのシェフがガーデンで採れた野菜を使って見学に来た小学生に昼食を振舞うプログラムがあるという。

そのシェフがその日のガーデンのスタッフとボランティアのランチも作ってくれる事になっているので、この際メリアブ を調理してもらい、みんなで食べてみるのはどうか、という。

以前からいつか味わって見る必要があるのでは、と思っていたので、ついにその時が来たか、ということでシェフとの連絡等アレンジをよろしくお願いすることにした。

 

とは言えここで気になったのは基本的にそこで飼育しているメリアブのウジ改めラービー(Larvae)は自分が自宅から持ってくる肉魚を含まないフレッシュな野菜果物穀物系生ゴミと小麦ブラン、カフェからのコーヒーカスを与えていて、園内のソイルファクトリーのコンポスト用に近所から集めてくるほぼ発酵しかけている生ゴミは使用していないものの、実際腐りかけの生ごみ食べて育ちました、というウジムシに対してみなさん食欲はまず沸かないはず。

ということで、一応大きめのラービーを予め選別し、新鮮なコーヒーカスの中に一週間ほど養生させ、腸内内容物の気持ち的入れ替えと香り的にも生ゴミ育ち感を抑え、エコロジーなカフェで育ちました風に軽く説明することで細かいことは見猿聞か猿で気にせず食べていただく事に。

 

いずれにしても当日子供たちにランチを振る舞い、その後スタッフ用ランチの準備も済ませたシェフは昆虫の調理経験はないが挑戦させて頂く、と快く引き受けて下さり、そこに居合わせたスタッフやボランティア達も、箱の中で蠢くウジがこれから調理されると聞くと一体これは何事なのか、実際何が出てくるのか、とざわざわ。

シェフが興味深そうに五感を研ぎ澄ませながら手際良く調理を進める中、好奇心とおっかなびっくりで満たされたその場の空気が印象深かった。

 

youtu.be

結果から言うとそこにいた多くスタッフやボランティアがこの昆虫と昆虫を食べるということにそれなりの関心と興味をもっており、こんなに食べるかな、と思う量の調理されたラービーが全てきれいさっぱりになくなってしまった。

みな恐る恐る、という感じもあったのだが、やはりプロが調理した、という手続きを踏んだことは(ウジ)虫を食べるというハードルを下げることにかなり貢献したのであろう。

一応シェフに情報として炒めや煎りよりも茹でた方がこの幼虫が持つナッツ系のフレーバーがより味わえるらしい、という旨と高温の油で調理すると弾けるらしい、というは伝えておいた。

zazamushi.net

シェフが取った調理方法はオイルで軽く炒め、レモン、バルサミコ酢、塩、蜂蜜、ハーブでさっぱり爽やかにまとめて見た目、香りもなかなかのもの。

ただソースの味が強かったのと、やはり炒めたことで体内の油分水分が飛んだのか、特有とされるクリーミーなナッツ系の味を感じるには難しいものがあり、終齢幼虫の外殻の硬さがやや強いこともあって、個人的感想としてはなんとも言えない、むしろ別にわざわざ食べなくてもいいかな、というもので、噂のうまみ的なナッツフレーバーを味わうにはやはりラービーの色が濃くなる前の幼齢を使った方が良さそうだ、という感想であった。

コンテナに入れられた活きラーバーとシェフ



シェフが生きたままフライパン で調理をしたため、動物愛護の倫理的観点からそれが信じられない残酷な行為ではないか、と批判する方もいたし、興味はあるけど自分ベジタリアンなんですわ、という方もいたりして、植物も含めた全ての命を利用し繋ぐ食という行為とその手続きについていろいろ会話も弾み意外と有意義な楽しい場であった。

バルサミコ、マヌカハニー、レモン、タイムでさっぱり

とはいえ調理を始める前に、さっきまでいた小学生達は帰ったのか、という確認をしていて、それはどうやら子供よりも引率の父兄の対応を配慮しての気遣いである様だった。

このファームは認定オーガニックという看板を掲げている中で、どの食べ物が良くて何を食べるべきかではなく、あくまで食べ物の生産方法による土壌を中心とした環境への影響、命を頂くまでの動物のwellfareについて共に考え配慮し実践を通して学ぶという視点で活動している。土壌や植物の健康状態や育て方、環境問題、動物の扱い方などそれぞれの人が持つ経験、社会文化的教育的背景などをベースにそれぞれ個人で見方考え方理解度合いの幅が大きく、主義主張の相容れないところも多いセンシティブでエモーショナルな問題を常に孕んでいるように感じる。

 

特に前述の牛の扱いの件を通してコミュニティガーデンのあり方やその活動について強い意見を持っている方々もおり、支援者たる近隣の皆様に伝える情報はその多様な考え方に配慮して透明性を持ってコミュニケートすべしとなった様で、子供にランチを振る舞ったキッチンで生ゴミで育ったムシを調理し食べてる、などという前衛的な話はあくまで内輪のお楽しみに留めておきましょう、ということなのかもしれない。