All about that bug

蠢くウジが開く道

アメリカミズアブ とハエ幼虫症 ・蝿蛆症(ヨウソショウ:Myiasis)

今後飼料として生産されるメリアブを含む双翅目(ハエ目)のウジに関する記事に、産業化に際して考慮されるべき点としてMyiasis(ハエ幼虫症・蝿蛆症)の発生、との記述があった。

そこでこのハエ幼虫症とは一体何の事か調べてみると静岡のお医者さんのブログにて以下の記述に辿り着いた。(参照ブログ

  • 1880年に牧師F. W. Hopeによる造語された用語「ハエ幼虫症 Myiasis」が一般的に使用され
  • Myiasisを起こすハエは、Obligatory myiasis(必須), Facultative myiasis(通性) and Accidental myiasis(偶発性)の3種に分
  • 双翅目(ハエ目)の幼虫によるヒトまたは動物の生体組織の侵入に起因する疾患をしめす。その一定期間、少なくとも、ホストの死組織か生組織、体液物質または摂取した食物を食べる

なるほどそういうものか、と読んでいると、どうやら日本国内においてメリアブのウジが腸ハエ幼虫症(Intestinal myiasis)として報告された記録があり驚いた。

論文に添付されていた下の表2の記録によると、33歳(1991年)と13歳(1998年)の患者の糞便 (stool /feces) にメリアブ(Hermetia Illucens) のウジが含まれているのが確認され、患者は33歳の患者は心身ともに健康、もう一件の13歳の患者は腹痛と便のゆるみを訴えたとのこと。

Med. Entomol. Zool. Vol. 66 No. 3 p. 91‒120 2015 日本で発症した人体ハエ症の再検討

ブログによるところ、腸ハエ幼虫症は

  • 食品上に堆積卵やハエの幼虫が、誤ってヒトに摂取され侵入した結果であ
  • 誤って食物とともに摂取されるハエの幼虫の多くの種は胃腸環境の中で生き残ることはできないが、胃腸環境で生き残る種では、腸内で孵化するまで幼虫キチンコートchitinous coatの存在は消化管を通して生存に役立つ可能性があると考えられ
  • 通常、患者は無症候性、幼虫は糞便中に無害に排泄され
  • 予防はハエに簡単にアクセスできる食料品を食べないようにするこ

ということで、糞便から出てきたとすればいかなる状況にせよウジあるいは堆積卵を偶然摂取した結果であり、一体どういう状況で活きウジを摂取し、糞便からその存在に気づいたのか、はたまた上記の通り卵は摂取された胃腸環境で本当に孵化することが可能なのか、そしてウジは生きた状態で糞便から確認されたのか、幼虫の皮が人体の腸内環境で分解されないとすれば、さらに硬いであろう終齢ウジを食べる動物の腸内環境はそのキチンコートを分解できるのか等、いろいろ興味深い。

 

爬虫類の活き餌として販売している米国等のサイトにおいて、ペットの個体に対してウジサイズが小さすぎる場合噛まずに飲み込み、消化されずに糞便から排出されることもある、という記述もあった気がするので、幼虫の皮に含まれるキチン質はそれなりに消化されにくいものなのかもしれないが、用を足してふと見た自分の便にもしウジが蠢いていようものならそれはかなりの驚きである。

 

先日ガーデンで調理してもらって頂いた際のメリアブは最終齢のものが多く殻も堅かった記憶があるが、流石にその後の便を調べなかったので今度食べる機会がまたあればいくつか噛まずに飲み込み一応便をチェックするのも悪くない。