ニュージランド航空(Air NZ)がNeste社ブランドのサステイナブル航空燃料(Sustainable Aviation Fuel:SAF/サフ)を導入するという記事が出ていましたが、その燃料の原料が基本的にはアメリカミズアブの餌ともなり得る食品産業から出る廃棄物由来ということで、流し読んだ記事と関連する事柄を備忘録としてまとめてみました。
とはいえ”土”と言うのはまだまだ謎の多い分野のようで、その価値、質、微生物エコ システムの多様性やら環境と社会のwell-beingに与える影響などを評価するのは何やら難しそうですが、とりあえず土づくりが”有機農業”をしている農家や、”エコ”な人たちが取り組む特別なこと、ではなくどこの街角でも普通に行われているような社会を目指す必要があるように思うこの頃、私は単に”エコ”な人なのでしょうか。
この取り組みはこれまでの生物多様性や生態系サービスの多くをタダ(無料)同然に扱いその損失や劣化を招く意思決定をして来てことの反省を踏まえて、その価値のすべてを経済指標で明らかにすることは困難である点には留意しつつ、ビジネス、行政などあらゆる主体が、商品の購入、企業活動、政策立案など、ありとあらゆる意思決定の場面に生物多様性や生態系サービスの価値を反映していくことが重要だとしています。
そのIPBESは2019年に「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書」を公表し、生物多様性の人類史上これまでにない速度での減少と、生態系サービス(自然の恵み、寄与)が世界的に劣化していること、それらの変化要因が過去 50 年で増大していることを指摘した、とのことです。
これはコンポストや土づくりシステムを「消費者の教育と意識啓発」のツールとして活用普及させる根拠として捉える土台になると思うところです。
ということで、このご時世にこの基盤サービスたる土づくりがバイオガスやら液体肥料作りより優先順位が低いのはいかがなものか(オークランドの話ですが)とも思えるわけです。
前述のTEEBプロジェクトは現在は各国における取り組みを支援することなどにより、政策決定などにおける生物多様性の価値の主流化の実践を進めている、ということなので軽く調べたのですが、残念ながらここNZでTEEBと関連する取り組みなされている情報は見つからず、TEEBが推進する形での生態系サービスの経済的可視化や自然資本の価値評価はされてない模様。
とはいえ以前のペットフードの記事でも書いたように、ここしばらく牛のゲップに含まれるメタンガスによる温室効果ガスと排泄物、牧草肥料の流出による流域水質汚染で酪農産業と政府の責任が問われている中「生態系サービスの経済的可視化や自然資本の価値評価」はかなりセンシティブな政治的トピックでもあと思われるので(憶測ですが)都合上あえて独自の評価方法を使っているのかもしれない。
グローバルな動きとしては近年においては2021年に「民間企業や金融機関が自然資本及び生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織」である自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosure:TNFD)が国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)、国連開発計画(UNDP)、世界自然保護基金(WWF)、英環境NGOグローバル・キャノピーの4機関により設立されたり、欧州を中心に政策としての取り組みが始まっている概念であるサーキュラーエコノミーなど今後、少なくとも先進国やグローバル経済活動の原則、ルールとして、企業が関わる原材料の採掘に始まり商品生産から廃棄までのライフサイクル全体の自然環境、特に劣化していたり保護価値の高い生態系サービスとの依存関係を開示、評価することを求める仕組みができるくるのでしょう。
ちなみにこのサーキューラーエコノミーというコンセプトは、最近流し読んだ論文によるとまだはっきりとした定義はなく、contested concept (本質的に論争的な概念)で少なくとも様々な分野のステークホルダーによって114通りの定義づけがされているそうです。
ただ、最も多く参照されている定義Ellen MacArthur Foundation (2012)によるもので、
”「サーキューラーエコノミー」とは、意図とデザインによって修復的または再生的な産業システムである。それは、「使用済み」概念を修復に置き換え、再生可能エネルギーの使用へとシフトし、再利用を妨げる有害化学物質の使用を排除し、材料、製品、システム、そしてその中のビジネスモデルの優れたデザインを通じて廃棄物の排除を目指すものである。"
だそうです。
“[circular economy is] an industrial system that is restorative or regenerative by intention and design. It replaces the ‘end-of-life’ concept with restoration, shifts towards the use of renewable energy, eliminates the use of toxic chemicals, which impair reuse, and aims for the elimination of waste through the superior design of materials, products, systems, and, within this, business models”自分もオンラインのサーキュラーエコノミートレーニングコースを受けてみて基本的にサステイナブルとか言っている場合ではない、という視点を植え付けられまして、我々が数世代先の子孫にとっての先祖として明確な未来のビジョンを持ち、現在の問題に対して日々のビジネスを通してラディカルな変化を起こすために勇気を持って共に取り組むための行動力を持てるか、という問いにまず向き合うことに始まり、それに尽きた気がします。
様々なビジネスを通じて商品の開発、材料の調達から顧客による消費、商品の役割の終わりまでどの工程のどのレベルでどれだけ生態系に対する影響を与えているか、その生態系に対するダメージの回復、再生が考慮、数値化され、デザイン作業によって各工程の”生態系ダメージ”と”廃棄物”という存在が排除し再利用するサーキュラーなシステムを作れるか、という座学とケーススタディでした。